映画日記110721

001『戦火の傷跡』サミュエル・フラー
Verboten! (1959)

冒頭数シーンを見てフラーにしては随分しょっぱい戦争物だなあと思ってましたが、低予算なのはともかく、第二次世界大戦末期にアメリカ兵と彼をかくまったドイツ人女性が恋に落ちるという序盤の紋切り型は、メインストーリーの完全な前振りに過ぎませんでした。

実際の所、この作品最大の興味は、戦後アメリカ軍による占領とナチ残党との争いが続く中、人と人が信じ合うことがずっと難しくなってしまったという部分。それぞれシンプルで偽りない感情がぶつかり合う中、全体としてどうしようもなく救いがたい状況が生まれてい部分にある。

勿論アメリカ映画として物語は収まるべき構図に収まるよう作られてますが、過程として剥き出しにされる感情や対立があまりに厳しく、実際何の解決も与えられていないので、きわめて大きな違和感を残したまま映画を見終える形になる。そしてそれ自体が、フラー作品の醍醐味。

最良のアメリカ映画とは、その見かけや個々の場面での感情のシンプルさに比して、全体としては全く単純なものではない。その最良の例の1つが、この作品にあると言って良いでしょう。

それにしても、ベートーベンの第5がジャジャジャジャーンと鳴る瞬間にアメリカ兵が倒れて、その手の下にはヒトラーのポスターがあって、壁際に立つドイツ人女性がそれを見つめながらフェードアウトって、こういうのやれるのは選ばれた特別な映画監督だけだと思うなあ。

002『飢ゆるアメリカ』ウィリアム・ウェルマン
Heroes for Sale (1933)

メチャクチャ面白い!『つばさ』や『牛泥棒』などで有名なウェルマンですが、実は30年代の充実ぶりには半端ないものがあり、この作品が作られた33年なんて6本もの映画を1年に作ってて、しかもその中には『家なき少年群』という超傑作まで!

『家なき少年群』は生涯ベストを選ぶとき有力候補として残しておきたい作品の一本ですけど、これもまたすっごく良かった。戦争の英雄であった筈のR・バーセルメスがその栄誉を他人に奪われ、戦後社会の中で人のため尽くしながらも報いのない人生を歩んでいくって感じ。

堂々とした骨格の大きな物語を悠々と語っていて、どんな人にも社会にもフェアな眼差しを向けつつ、細部のユーモアや見せ場を逃すことなく、戦争や工場、刑務所、ストライキ、ホーボーといった魅力的な場面をそれぞれ見事に輝かせている。しかも超低予算。信じがたい!

こういう作品こそ今リメイクすべき。キャピタリストも共産主義者もドイツ軍も同じ資格で登場し、その美点と問題点がキチンと分かるよう作られてる。しかも、映画として本当に面白い。全然救いはないんですが、とにかくポジティブさを失わない辺り、ああアメリカ映画だなあ、と。

003『D17号線の遭難者たち』リュック・ムレ
Les naufrages de la D17 (2002)

あ~、すんごい色気ある映画!メチャ楽しい!フラーやフェラーラとは違った意味で、こういうユルユルですっとぼけた映画作るのも、監督本人の資質というか性格というか器というか人間性が大いに問われるよなあ、と改めて。

ムレでは、以前ジャン=ピエール・レオー主演の『ビリー・ザ・キッドの冒険』を上映して、たぶん他ではまだ殆ど彼の作品は上映されてないと思うんですが、ここは1つ思い切ってこれもやっちゃいましょうか?マチュー・アマルリックも出てるよ!

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