映画日記110729

cartel-finisterrae『Finisterrae』セルヒオ・カバジェロ
Finisterrae (2010)

頭からシーツをかぶっただけの2人組の幽霊が命を得るために旅に出る話。

アヴァンギャルドのイメージと文脈をポップへと変換しつつ、もう一度それとなく源流に戻そうとする試みだと言えばいいでしょうか。

2人組が旅の指針を得るためガレル大聖人(笑)に相談に行くって場面でニコが流れたりして、ああ、なめてるなこいつ、と思わず笑ってしまいましたが、なんだかんだで結構面白いんだよなあ。

ガレルの『内なる傷痕』に代表されるアヴァンギャルド+アート系フィルム+ガス・ヴァン・サント+ハーモニー・コリン+モンティ・パイソンって感じだと思いますが、撮るべき風景を見つけてきて置くべき場所にカメラを置いてるし、いわゆる映画の呼吸を分かってる人っぽいので、アート系映画にありがちなしょっぱさはないです。

むしろ、面白く作りすぎかなって気はする。

PDVD_202『ディリンジャーは死んだ』マルコ・フェレーリ
Dillinger e morto (69)

ガスマスクのデザイナーであるミシェル・ピコリは、若い妻とメイドの3人で暮らしている。ある日、ディナーを調理していた彼は、戸棚からディリンジャーに関する新聞記事に包まれた古い銃を発見する。料理をし、テレビを見、家庭映画を漫然と眺めがら、彼はその銃を分解・再生し、極彩色にペイントする…

といった感じで、ま、アントニオーニ的な重く撓んだ時間と実存的な雰囲気、そこにポップカルチャーの記号をゴダール風に衝突させつつ、神話的な物語の再生をメタフィクションないしメタフィルムの映画として展開している、と言えばいいでしょう。

ほぼ一軒の家だけで撮影された、超超低予算の前衛映画ですね。90分ほどの作品ですが、面白いかと言われると、正直、最後の10分までかなり退屈(笑)。

ただし、そこで散りばめられたアイディアは現在まで繰り返し何度も使われている原型の一つであり、隙間だらけに作られているからこそ、ここから刺激を与えられて生まれる発想もまだまだあるかもしれませんし、逆に、こうした作品以降に現在それでも新たに自分の作品を作る意味を考えるための試金石ともなるように思います。

ラストで再生される神話的イメージは、いかにもイタリア的であり、同時に無意識(?)の『ノスフェラトゥ』でもあると思いました。それと、主人公がペイントする銃が、まるっきり草間彌生のオブジェみたい。このあたり、なんか面白い。

PDVD_219『壁にぶつけた頭』ジョルジュ・フランジュ
La Tete contre les murs (59)

20年ぶりくらいに再見。異常者という烙印の元、社会不適格者を隔離し監禁する施設としていかに精神病院という場所が機能したかというフーコー的主題を描いた社会派サスペンス。

タイトルが与える印象や、フランジュの神話的イメージからすると、むしろきっちり作られた古典的作品という感じが強いでしょう。フランジュの処女長編。

しかし、アヌーク・エメの登場シーンや、とりわけエディット・スコブが登場する短いシークエンスの美しさには、本当に息をのみます。まるで内面を欠いた純粋な女性の美を崇めるかのように、これほど透明に、徹底して、ある意味で残酷にスクリーンに刻みつけた作品は、ちょっと他に思いつかないほど。

ラスト近くのベッドシーンも、もちろん近年の映画のように最後まで描かれるなんてことなくて、ただ横たわってベルト緩めるだけなんですが、もう信じがたいほどエロい!聖と俗の狭間にエロがあるという、まあ言葉にするとパターンではありますが、それを具体的で豊かなイメージとしてスクリーン上で実際に描ける人、実はなかなかいないんだよなあ。

foreign-1-articleLarge『FOREIGN PARTS』Verena Paravel & J.P. Sniadecki
FOREIGN PARTS (2010)

ニューヨーク、クイーンズにあるウィレッツ・ポイント。他に行く当てもない中南米からの移民が暮らすこのジャンクヤードは、まるで街全体がぬかるみであるかのよう。犬の視点からその様子を捉えつつ、映画は、再開発の決まったこの街と人々の独特の魅力を次第に明らかにしていく、って感じ。

2010年のロカルノ映画祭で審査委員特別賞と最優秀処女長編賞をW受賞したそうです。うーん。なんかもう一つ乗れなかったけど、この手の映画を見るにはちょっと体調良くなかったので、またそのうち再チャレンジしてみます。

試写日記:『ラビット・ホール』
ジョン・キャメロン・ミッチェル

大きな精神的外傷を乗り越えようとする夫婦の話。ってことで、典型的な癒しのドラマになりそうな主題ですし、まあ、アーロン・エッカートはそういう時うってつけの役者さんだと思いますが、一方で、元エリートビジネスマンからセレブな妻という勝ち組コースに収まったと思い込んでいたニコール・キッドマンのイヤな奴ぶりがすさまじく(笑)、その猛毒がスパイスとなっていつの間にかかなり引き込まれるドラマになってます。

こういう変化球、最近のアメリカ映画は上手いんだよな。

重要な役で出てくる漫画家志望の少年も、やや『ドニー・ダーコ』みたいなテイストを漂わせていて、物語に幅と奥行きを与えてますね。

試写日記:『ザ・ウォード』
ジョン・カーペンター

精神病院を舞台としたホラーアクション。
いやー面白いっす!

物語はホラーよりですが、撮り方はやっぱアクション風味が強くて、そこがいいんだよなあ。
文句なしに最高!!

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