映画日記110803

PDVD_318『パニッシュメント・パーク』(71) ピーター・ワトキンス
Punishment Park

再見。いわゆる人間狩りものですね。カウンターカルチャーの時代、アメリカでは反政府的であるとみなされた人物は物的証拠の如何に関わらず、パニッシュメント・パークと呼ばれた砂漠で警察の追っ手から命がけで逃げるゲームに参加させられた、というもの。

ピーター・ワトキンスはもともと著名な英国ドキュメンタリー映画作家で、いわゆるフェイク・ドキュメンタリーの始祖の一人。この作品も、そんな手法で作られたものですが、とにかくすっごく良く出来てます。ホントに面白い。衝撃的な面白さと言って良い。

実際、この時代の政治的フィルムとして、ロバート・クレイマーの『アイス』やハスケル・ウェクスラーの『アメリカを斬る』と並んで海外では有名な作品ですが、アメリカでごくわずかに上映された際、評論家から総攻撃を受けたことなどもあり、実際に見られる機会のあまりない作品でもありました。

PDVD_448当時の若者精神を詩的にうたいあげた『イージー・ライダー』とは異なり、様々な立場の人物、徴兵忌避者もいれば、黒人もいれば、女性活動家も詩人もテロリストも犯罪者も扇動家も歌手も知識人もいて、そうした人々が、いかに国家の暴力や個人の権利と平等性について考え行動したか、荒々しいタッチで切り取っています。

警察や体制の側にしても、単に国家の犬として描かれているわけではなく、悩んだり、恐怖にとらわれて引き金を引く青年がいたりなど、かなり複雑に描かれているといえるでしょう。

決して一様ではない、彼らの時代と政治へのコミットの仕方に対して、そこに形式を与えようとする試みが、この『パニッシュメント・パーク』という作品だと言って良いと思います。そして、それはきわめて高度に達成されている。
実際、そのスタイルは、近年ハリウッドなどで大流行している疑似ドキュメントの手法を、ほぼ完全に先取りしているほど。『クローバーフィールド』の観客がこの映画を見ても、たぶん普通に楽しめますよ。すっごい緊張感が全編みなぎってるもん。

PDVD_463それはまた言い換えれば、現在の私たちにとって、そこにはもう一つ別の位相が加わるということでもある。つまり、あの時代の様々な出来事と議論に一つのスタイルを与える試みがこの作品であったとするなら、現在の私たちは、逆に、こうしたスタイルによって感情や思考を先導される時代に生きているわけです。

同種のテーマを描いた近年の作品が空疎であり、そこには人間や感情や思考の多様性・複雑性が全く欠けているというばかりでなく、ハリウッドの疑似ドキュメンタリーというスタイルやその物語の形式が、いかに私たちの思考と感情を支配しているか、現在の私たちはそこから始める必要があると思うのです。

疑似ドキュメンタリーは、それがリアルの幻想を私たちに与えるからではなく、現在では私たちの思考と感情をシステムの中に馴致する道具として使われる可能性があることこそ、批判的に検討されなくてはいけないのではないでしょうか。

PDVD_506『前途の光』(39) エドガー・G・ウルマー
The Light Ahead

第2次世界大戦前夜、ウルマーがイディッシュ語などで撮っていた多くの「エスニック映画」の一本。貧しく迷信にとらわれた田舎の村落で暮らす、それぞれに障害を抱えた若いカップルが、コレラの流行とともに人々の犠牲にされそうになるが…、という話。

19世紀のイディッシュ語小説に基づいた作品ですが、明らかにファシズムの影を感じさせるものになってますね。いろんな意味で歴史的に超貴重な作品。ただし、映画的に言うと、たぶん当時のユダヤ人演劇でお約束であったのだろう長台詞や役者の演技をそのまま撮った場面など正直きついです。

一方、当時の風習や衣装などを記録映画的にとらえた部分や、とりわけ外光の中での屋外シーンはどれもきわめて素晴らしく、『日曜日の人々』に連なる大らかな魅力が存分に発揮されていました。コレラの危機を叫ぶ老女を背景に、若い娘達が下着姿で水遊びする場面とか、本当に楽しかった。

PDVD_519『水兵の3クラウン』(83) ラウル・ルイス
Les Trois Couronnes du Matelot

昔、東京日仏学院で見て以来の再見。久々に見直して面白く感じるかなと思ってたのですが、うーん、やっぱ面白いような面白くないような(笑)。

たぶん、もっともルイス的な作品の一本で、物語としては、恩師を殺した学生に対して、いずこからともなく現れた水兵が船に乗せてやる代わり自分の話を聞くことと3クラウンの硬貨を要求するって感じ。幻想譚ですよ。

幻想と現実と夢とほら話が幾重にも重なり合う中、慎みを欠いた文学的イメージという名のゴーストが寂しげに群れ集う禿げ山の一夜って感じの映画でしょうか。

PDVD_529これだけ大量に幻想的なイメージと物語の断片を骨董屋の片隅のような場所に賑やかで寂しげに吹き寄せながら、そこに物語的な高揚やカタルシスを全く寄せ付けようともしない姿勢ってのは、たぶん面白いんじゃないかと思うんですが…。うーん。どうなんでしょうね。結構見てはいるんですが…。

ラウル・ルイスっていつもそうなんだけど、この人何をやってるんだろうかと見ている間から頭で言葉を転がし始めて、で、そうやって思いついた表現が自分で面白く、でも結局映画はそこまで面白くない気もする、というパターン。

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