映画日記110820

Movie-The-Last-House-on-the-Left-poster-500x662『ラスト・ハウス・オン・ザ・レフト』(2009) デニス・イリアディス
The Last House on the Left

DVDスルーだった『ラスト・ハウス・オン・ザ・レフト』をWOWOW録画で。ウェス・クレイヴンの処女作『鮮血の美学』をプロデューサーに回ってリメイクした作品。監督はギリシャの人。ふーんって感じかなと思って見たら、ふーんって感じでした。

70年代と違って映画作りがこぎれいなので、ああ、この子ならこの程度脱がされる扱いだろうなとか思ってると実際その通りだった。仕方ないことだろうけど、まあ、映画に殺気は宿らないですよね。だからこそ、この逆パターンの『ファニーゲーム』なんかが妙に評価されるのかもしれませんし。

あと、お母さん役の人、どっかで見たことあると思ってクレジット読んでたら、びっくり、モニカ・ポッターかあ。見るの、『スパイダー』以来だもんなあ。『ソウ』とか見てないので、ちょうど10年ぶり。

My_Soul_to_Take_2586『ザ・リッパー』(2010) ウェス・クレイヴン
My Soul To Take

で、これまたDVDスルーだった『ザ・リッパー』(ウェス・クレイヴン)を見ました。面白い!やっぱ、この人は面白いなあ。これで2作続けて日本未公開だけど、なんてもったいないことを!今年公開された殆どのアメリカ映画より面白くて見るべき作品なのに。

ウェス・クレイヴンは、『エルム街の悪夢』か『サランドラ』のあたりからずっとリアルタイムで見てきましたが、ここ10年くらいでしょうか、もはやホラーという一つのジャンルで引き受けるべき作品ではなく、むしろ一人の巨匠の作品として見られるべき映画だと思う。

この『ザ・リッパー』にしても、ほとんど同じ話を実に軽やかに全く違った奇妙で異様で不思議な作品に仕立て上げていて、いやあ、実に素晴らしい腕前だと感心しました。メチャクチャ面白い!考えれば考えるほどヘンな映画だ。

鏡を利用した卓越した場面がいくつかあってですね、まあ、みなさんも近所でレンタルできるはずなので是非見ていただきたいですが、この21世紀にマルクス兄弟やるか!それもホラーで!っていう(笑)。ホント面白い監督さんだ。10月公開予定の『スクリーム4』も楽しみで仕方ない。

この手のホラー、サスペンス、ショッカーって、張り巡らせた伏線が最後一つの像を結ぶべく収束していくもので、それに失敗すると焦点のぼけた映画になるんですが、『ザ・リッパー』の場合、さまざまな要素が微妙に斜線を描くというかねじれの位置になるというか、とにかくその距離感が絶妙。

一瞬ですべて分かるような、あるいは永遠に理解できないような、そういう奇妙な世界像を、ハイスクールを中心にしたスモールタウンの順列組み合わせ的な人間関係のルールの中で生み出していて、まあ、こういうのがやっぱ映画のマジックってやつだよなあ。

本格的なウェス・クレイヴン論でも書こうかな。

cold_souls_poster_27504『コールド・ソウルズ』(09) ソフィー・バルト
Cold Souls

フランス出身の女性監督による長編デビュー作。ポール・ジアマッティが彼本人の役を演じたことで評判になった。日本未公開。DVDも未発売。アメリカ独立系作品の安定したレベルの高さを感じることができる作品です。実際、まあまあ面白い。

チェーホフ「ワーニャ叔父さん」を演じる俳優のポール・ジアマッティは、役と現実の二重写しに耐えられなくなる。そんな時、魂を肉体から取り出し保存するという新たなメディテーションを雑誌で見つけた彼はさっそく試してみることにするが取り出した魂を盗まれてしまい…という話。

一言で言うと「ビーイング・ポール・ジアマッティ」(ビーイング・ジョン・マルコヴィッチ=『マルコヴィッチの穴』)ですが、奇抜なアイディアをあくまでオーソドックスなインディペンデント系映画のフォーマットに乗せつつ、どこまでシリアスかあるいはギャグなのか分からない映画作りをしています。ひたすらまじめでに作ってあるのが逆に面白いというノリ。

とりわけ、ジアマッティとエミリー・ワトソンの芸達者な二人による夫婦場面がナイス。繊細な感情描写で見事な中年夫婦像を作り上げているんですけど、それが同時に馬鹿馬鹿しくて笑えてしまうという。しなやかで強靱な感受性を備えていないと、こういう芸当はなかなかできません。

アイディアという点では、だから、間違いなく『マルコヴィッチの穴』を下敷きにしてますけど、映画的な面白さではこちらの方が上。ついでに言うと、松本人志の『シンボル』よりずっと上。笑ってあげなきゃ、このセンスの良さを感じてあげなきゃ、という義務感に縛られる必要ないのもいい。

2『カースド』(2005) ウェス・クレイヴン
Cursed

久しぶりに再見。大筋は覚えてましたが、それでもすっごく面白かった。それは、映画が細部の魅力に満ちあふれてるから。クリスティーナ・リッチが最高に魅力的ですが、弟役はジェシー・アイゼンバーグでしたね。すっかり忘れてた。素晴らしかった。

ややバジェットの大きな作品で、CGもそれなりに使ってますが、ホラーの定石である「ないものをあるかのように見せる」ないし「その仄めかしや予兆で引っ張る」のではなく、そこに実際にあるものの魅力を独特の方法で引き出すのがウェス・クレイヴンの映画マジック。夢や幻想はそのための装置。

とりわけ、女ウェアウルフの悪口言い立てておびき寄せるという抱腹絶倒の場面(中指立てるウェアウルフとか(笑))なんて最高でしたね。あそこは着ぐるみじゃないかな?少なくとも、着ぐるみ的な魅力にあふれる卓越した場面でした。

『スクリーム』の滑って転ぶ殺人鬼が典型的ですが、やはり、役者とか装置とか小道具とか、その場に物質としてあるものの間抜けだったり奇妙だったりする魅力的な横顔をとらえるのが、この監督さんの本領。それは、『ザ・リッパー』のように低予算でおなじみの物語を語るとき最も映えるように思う。

Cyrus『僕の大切な人と、そのクソガキ』(2010) ジェイ&マーク・デュプラス
Cyrus

リドリー&トニー・スコットがプロデュースしたインディペンデント系作品。アメリカでは、昨年のベストテンに入れてた批評家も何人かいたので、見てみました。日本では、DVDスルー。

離婚して何年もたつダメ男が、元妻主催のパーティで素敵な女性と出会うが、実は彼女には未婚のまま一人で育てた息子がいる上、仲良いレベルを激しく通り越した親密さの二人は殆ど共依存的な関係にあり、当然、邪魔者の主人公は息子から様々な妨害を受け始める…って話。

小さな人間関係を親密でドキュメンタリーのような生々しいカメラでとらえた作品。…と要約すると、まるでカサヴェテスのようですが、もちろんそんなことは全然なくて(笑)、今風なフェイクドキュメンタリーの手法で撮られたスモール・ムービーって感じが正しいです。

そのカメラワークも、むしろかなりあざとくて、おいおい、ズームこれ見よがしに使うなよって思うこともしばしば、お話としては割と面白いのに、妙なスタイルで逆にうんざりする部分が大きかった。

ジョン・C・ライリー、マリサ・トメイ、キャスリン・キーナーはいつも通り上手かったですが、なんと言っても、タイトルロールのサイラス(原題は「Cyrus」)を演じたジョナ・ヒルがなかなか見事なウザさを発揮していて、この辺は面白かったですね。

はじめてママを訪ねてきた中年男に対して、二人っきりの家の中、その顔を真っ直ぐじっと見つめながら自作の曲をシンセサイザーで熱演するとか、なんてウザすぎる状況だろう(笑)。

サイラスは、息子と言っても二十歳過ぎたいい大人という設定で、だからスポイルされた未成熟な大人という主題がそこにあるわけですけど、こういう相手に対してもあくまで大人な社会的関係の構築を求めることでトラブルを乗り越えようとするあたり、アメリカだなあという気がします。

これが日本だと、その子供に作品自体がシンパシーを寄せるにせよ、あるいは同族嫌悪的な突き放し方するにせよ、さもなくば通り一遍な「大人になれ」という物語で処理するにせよ、いずれにしてもこういう本当の意味で大人な関係の構築それ自体をじっくり描くことはないように思う。

中年カップルのリアルな恋愛ものというジャンル自体、まあ日本じゃ成立しないと思いますし、なにより主人公はジョン・C・ライリーですからね(笑)。一見の価値はあると思います。逆に言うと、一見の価値もないような作品がいっぱいあって、…以下省略。

試写日記:『猿の惑星 創世記』ルパート・ワイアット
Rise of the Planet of the Apes

面白い。よくできてる。ヒットする。

my_soul_to_take

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