ジョアン・ペドロ・ロドリゲス!

PDVD_067『ファントム』(2000) ジョアン・ペドロ・ロドリゲス
O Fantasma

さて、昼間っからすごい映画について書きます。内容的にもすごい。すんごいハードコアな作品ですけど、映画的にもホントにすごい。クローネンバーグやカウリスマキ、フランジュ、スコリモフスキーと比較されるべき才能!

『男として死ぬ』見たときに直感しましたが、やはりJPRの根底にはアメリカに代表されるクラシックな映画がある。その個人的な執着やファントムをポルトガル現代社会の即物的な現実と結びつけ、きわめてアヴァンギャルドな現代映画の形式の中で実践、展開している。

クイアで倒錯的なサブカルチャーに属し、かつヨーロッパ的な作家主義の伝統や現実主義の土壌にも深く根を下ろしつつ、アメリカのモンスター映画やサイレントの連続活劇にも連なる映画の魂をポルトガルの現実の中で再生させること。JPRの映画的野心はそうした場所にあると言えるでしょう。

PDVD_122それって、すごいじゃん!

物語としては、街の清掃業者に勤め白い犬を飼い美しい彼女もいる若い青年が、ふとしたきっかけから男色に目覚め猟奇的なSMへと惹かれる内に、街のダークサイドに囚われ、やがて心身共に変貌を遂げていくって感じ。とは言え、殆ど台詞も説明的な場面もなく、断片的状況から隠喩的に示されるだけ。

JPRインタビューでは『ザ・フライ』との比較に基づく分析が語られていましたが、そこには間違いなく、幻想に捕らえられた人間の身体的変容という主題があり、それはまたクローネンバーグに連なるものだと言えるでしょう。 http://youtu.be/04uy008OEQ8

同時に、そのオリジナルでもあるモンスター映画への参照も可能。あるいは、作品後半で全身ラバー姿となった主人公からは、フイヤードやフランジュといった名前をすぐさま連想させられる。ラストは殆ど『捜索者』!ファントムとは、主人公の幻想であると共に、ある種の映画の力も示している。

PDVD_150街のダークサイドを映画的形式化の中で再解釈しようとする試みからは、初期のカウリスマキをも想起させられます。実際、当時全く未知の新人監督だった彼の『パラダイスの夕暮れ』をはじめて東京国際映画祭で見たときと同様の衝撃が、この作品にはありました。もちろん、テイストは全く違いますが。

ジョアン・ペドロ・ロドリゲス作品の素晴らしさの一つは、きわめてスタイリッシュであるにも関わらず、決して審美主義に固着してしまわないことだと思う。そこでは、幻想と現実、映画と現代社会、シネマとサブカルチャーの間で引き裂かれ、それらを往還するダイナミズムが常に胎動している。

寓意的なオープニング場面に作品中盤で戻る構成は、『男として死ぬ』と同じ。すごいですよ。マンションの廊下をドーベルマンが徘徊するだけですさまじい殺気が漂うんだから!内容的な奔放さと構成的な折り目の正しさとのダイナミズムが、こういう場所からは感じられる。

にしても、ホントにすごい場面がいっぱい!ゴミ回収車と三輪自動車を前後に走らせて、その間でフロントグラス越しに男女が手と手を合わせるとか!野生動物相手にちょっと無茶すぎる振る舞いに出る場面とか!ああ、映画撮るってこういうことだよねって始原の喜びに満ちあふれてる!

『ファントム』、すでに10年以上前に撮られていた作品で、ベネチア映画祭のコンペに入ってたらしい。フランスやアメリカで広く知られるようになったのは去年あたりからみたいですが。ともあれ、ジョアン・ペドロ・ロドリゲス、素晴らしい才能です。映画に興味ある誰もが必見!

『キック・アス』(2010) マシュー・ボーン
Kick-Ass

特に理由なく見逃してたので見ました。
まあ、狙いは分かりますが、それ以上のものは感じなかったなあ。
ちょっとそこはどうなの?と思う演出もあれこれ。

試写日記
『アントキノイノチ』瀬々敬久

良い映画だと思います。
上映時間80%までかなり良い映画だと思ってました。
年に12本こういうのが見られれば、日本映画はとても充実すると思います。
主演の二人が素晴らしい。
エークラナナは映画のクオリティを1.5倍にする。

試写日記
『一命』三池崇史

最初と最後が良い。
この映画の満島ひかりには疑問あるが、瑛太は良い。

試写日記
『トーキョードリフター』松江哲明

ずいぶんスタイリッシュで作った方に流れて来てて、それは正解だと思う。
松江作品はある種のニーズを突いていて、それも作家にとって大きい。
そのニーズを発する磁場が、ここで言うトーキョーであって、ただその需給一致の先にある映画を見たいと思う。

o_fantasma

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