女性監督からはじまったあれこれについて

キャスリン・ビグローというのは、アクション映画監督としての自らの才能とコントロバーシャルな題材をタイムリーに取り上げるプロデューサーとしての資質を兼ね備えた存在で、だからあれほど話題になりアカデミー賞も獲りアメリカの女性監督として例外的な注目を浴びていると思うのですが、

その作品に一貫した裏の意図や主張、政治的プロパガンダ、アメリカの覇権主義が備わっていて、それこそが彼女の作品の評価の決め手になるという立場に対しては、慎重に判断すべきじゃないかと思ってます。

正直、隠された覇権主義的意図という意味では、『アバター』の方がずっと顕著だった気がしますが、あちらはそれほど話題にならなかった。今、ビグローがビン・ラディン殺害を題材にした新作を撮っていて、これまた非常に議論を呼びそうですが、あまり妙な先入観を持つのはどうかという気も。

実際、そのビグローの新作『ゼロ・ダーク・サーティ』は、共和党ピーター・キングによる非難をきっかけにCIAとペンタゴンから聞き取り調査などの介入を受けていて、これは間違いなく大統領選前に公開されるのを阻止する目的だったと思います。
http://www.eyeforfilm.co.uk/news.php?id=690

なんで、アメリカつったって日本で思ってるような一枚板じゃ全然ないし、そういう様々な思惑や権謀術数が生々しく飛び交う現場で、いやあエッグイ題材取り上げるよなあ(笑)って気はしますが、勿論それは作品とイコールではないし、その立場にしても必ずしも明瞭ではない気がする。

逆に、極めて粗雑で乱暴な議論として(だから間違いだったらすぐに撤回しますし謝りますが)一つ問題提起をするならば、日本のシネフィルには、ふわふわしたオシャレな女性監督作品以外あまり受け入れようとしないミソジニーの側面はないでしょうか?

自分の映画を撮りたいだけのガツガツした女性監督だって面白いと思うし、ひねくれた陰険なまなざしを細部に注ぎ続ける女性監督だって面白いと思うんですが、後者なんかとりわけ、なんかいかにも女性監督って感じだよねえ、という言辞が否定的ニュアンスとして口にされる気がします。

なんか、いかにも男性監督の発想だよねえ、というのは、それに対して、ほぼ否定的ニュアンスは感じられないんですが、どうでしょう?

なんか、70年代くらいにあった性を描いてはじめて人間がとらえられる的な発想と、それに対する80年代的な嫌悪感、潔癖主義みたいなものとの両極の間で、『すべてのリアルな女の子たち』がすっぽり抜け落ちてしまったまま来ているような気がする。

重要な試みは、だから、前者への回帰ではなくて、両者の間にある広大で豊かな空間を映画として発見することだと思うし、そうした場所で女性監督の様々な試みも見ていく必要があるように思う。

80年代的な潔癖主義というのは、その後の原理的探求と呼ばれる傾向とも合わせ、ものすごく時代的な気分に支配されている側面があるような気がして、それはつまり他者との面倒くさくて時間のかかる雑多な関わりを都合良く排除するって傾向に繋がると思う。

逆に、とりわけ70年代的な傾向とも繋がる「性」とか「肉体」を媒介してのみ「女」や「他者」を描くことが出来るって発想に対して、それは男の側の一方的な幻想の裏返しだってのもそうだと思うし、だからそこに回帰しようという試みは私にはあまり面白く感じられない。

スティーヴ・マックィーンの『シェイム』がとりわけ面白かったのも、そのあたりですね。それはつまり、ある種70年代的な切り口から、80年代的でスタイリッシュな世界を展開し、そこに映画としての実在感を与えようとしている。その試みはとっても面白いと思う。

すでに『ハンガー』もそうした試みでしたが、ただし、肉体と暴力という主題に対して、孤独な男性のセックス妄想という主題はさらに踏み込んでると思うんですね。端的に、それって痛いでしょ?リアルに痛い主題とその切り口と、それを世界として現実化させる演出力があの作品には備わってると思う。

たとえば、映画に元気がないとか言われると、元気のない映画と元気のある映画が対立的に俎上に上げられて議論される。でも、大事なものは常にその間にあるんじゃないだろうか。対立的なものは常に相補的でもあり、そのマトリックスを引き受ける限り、私たちはそこから逃れられない。

同じように、「日常をリアルに描いた映画」と「映画ならではの嘘や想像力を生かした映画」という対立があるのではなくて、そうした問題の枠組みから離れ、いかにして新鮮で魅力的な映画のボディを発見することが出来るかって課題のみがそこにはあるんじゃないだろうか。

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