世界の最前線で映画を思考するために

明日の横浜日仏学院シネクラブでは、セドリック・カーン『リグレット』の日本語字幕付きフィルム上映と共に、いつものように私の方でトークを担当させていただきますが、昨日からのカンヌの話題とも合わせ、今世界で何が起こっているかを射程に入れたかなりクリティカルな話となる予定です。

『リグレット』は、フランソワ・トリュフォー『隣の女』をベースにした作品となっていますが、それは単純なリメイクでなければ、オマージュでもなく、映画ファンが好みそうな映画的記憶って古くさい話でもない。それはむしろ音楽などでのリミックスに近い試みです。

現代映画のフォーマットの中で、トリュフォー作品を換骨奪胎し、その精神とエネルギーを受け継ごうとする試みだと言っても良いでしょうか。ここには、映画史や伝統と「自分たちの映画」を対立させたり、関係ないものとして考えるような素朴さとは完全に無縁の世界の豊かさが広がっています。

世界の最前線で映画を考えるための、現代映画の一つのレッスンのようなものとするつもりです。4月21日18時より、セドリック・カーン『リグレット』@横浜日仏学院シネクラブ、どうぞよろしくお願いします。
http://blog.ecri.biz/?p=1682

明日の横浜日仏学院シネクラブ『リグレット』トークですが、映画史の偉大な作品をお勉強なんて馬鹿馬鹿しいと思っている人にも(にこそ)来て欲しいと思ってます。そこには、歴史や伝統から学ぶとか映画的記憶とかいったお馴染みの議論とは全く異なる現代映画のアクチュアリティがあるからです。

どうやって日本の映画館で上映されヒットする商業映画を撮るかって問題は私の興味ではありません。むしろ、いかにして質的に世界に互して闘える現代映画を作り出し、その文脈と可能性を言説的に準備し、押し広げ、そして生々しい国際的な映画政治学の中で流通させるか?

こうしたフィールドで議論をしたいと思っていますし、明日のトークもその流れの中での話になる筈。こういうことこそ、今考えなければいけない。緊急の問題として議論しなければいけないと思っています。カンヌのコンペに一人の日本人監督の名前もないことは、やはり重大な問題ですから。

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カンヌ映画祭2012コンペについて呟きのまとめ

あ、カンヌ映画祭ラインナップが出ましたね。先日のリークかフェイクかという謎のリストですが、ある視点部門も含めるとWIPリストとしてやっぱ良い線行ってた気が(笑)。ちょっと時間ないので後でゆっくり見ますが、『テイク・シェルター』のジェフ・ニコルズ最新作がコンペ入ってるよ。

発表されたカンヌ映画祭2012のラインナップを見てますが、分析すると色々見えてきて面白いですね。常連どころに加えてカラックス入ってるのがファンにはうれしいところでしょうが、その他のセレクトもなかなか味がある。

一番意外だったのはドグマの『セレブレーション』なんかで記憶しているトマス・ヴィンターベアがコンペ入りしているあたりでしょうか。これは事前に全く名前を聞かなかった気がする。

他に今回のカンヌコンペ全体の特徴としては、やはりジェフ・ニコルズやリー・ダニエルズらアメリカ・インディペンデント映画を大きく扱ったこととか、女性監督が一人も入っていないこと。あと、ジョン・ヒルコートあたりのオーストラリア勢になるでしょうか。

しばらく前から私は意識して米インディペンデント系作品について頻繁に書いてきましたが、ね?言ったとおりでしょ?という感じです(笑)。ジェフ・ニコルズとか!『テイク・シェルター』だって言ったじゃん!これは日本公開までされてるんだから、世界で今何が起こっているのか感じないと。

この辺の市場に潜り込むには、最初からキアロスタミあたりを目指す馬鹿はいないわけで、じゃ今回で言うと誰のポジションを狙って、そのためにはどういう作品と文脈を作って行くべきか考えなきゃいけないわけですよ。それが先日来何度か書いてる戦略ってやつです。世界と闘うための戦略。

国際映画政治学講座でも開講するかな?(笑)カンヌのセレクトはロジカルでいい。

カンヌのセレクション見ると、やっぱ『アーティスト』や『トワイライト』見て色々考えておくべきって改めて思いますね。自分の趣味や理論の正しさ(それは原理的に間違えようがない、だって何もそれを否定できないんだから)を主張する以外にやるべきことが、映画批評家には沢山あるんです。

コンペでの女性監督の不在は気になりますが、日本映画が入ってないのはこんなもんですよ。そこでどうすべきかって議論が全くないのもそんなもんでしょうね。でも、そんな日本の現状とは無縁にこの問題を考えようって人は私以外にもきっといる筈で、そうした人と何かはじめて行きたいと思う。

『トワイライト』や『ハンガー・ゲーム』においしいところ持って行かれ、コアな映画ファンでさえ(いやむしろ彼ら彼女らこそ)『アーティスト』や『テイク・シェルター』に秘められた可能性を見逃し、そしてカンヌコンペに自国の作品を一本も送り込むことができないのが今の日本の現状です。

因みに、今回のカンヌセレクションで『アーティスト』だってのは、主演のベレニス・ベジョが司会を務めるって話ばかりでなく、あの映画の成功を支えた米インディペンデント系映画会社ワインスタイン・カンパニーの驚異的な成功が背後にあるからです。配給作品が2本もコンペに入ってる。

さらに、間に合わなかったポール・トーマス・アンダーソンの『ザ・マスター』やタランティーノの『ジャンゴ・アンチェインド』なんかもその布石というかセレクションの背後の理由としてあって、もう盤石の体制。独立系でオスカー作品賞取って、次のカンヌでこれですから。ワインスタイン・カンパニーはすごいですよ。

リー・ダニエルズやジェフ・ニコルズの背後には、デヴィッド・ゴードン・グリーンからケリー・ライヒャルトらへの流れと力学、そしてその中での彼らのポジションを読むべきだし、『トワイライト』出演者たちの厚遇ぶりも見逃せない。マシュー・マコノヒー主演作が2本も入ってて、彼は次のソダーバーグ映画にも出てる。ここには、明確なロジックがあるのです。

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