『ジョージ・ワシントン』

gw51『ジョージ・ワシントン』
デヴィッド・ゴードン・グリーン

傑作!これは本当に素晴らしい!『すべてのリアルな女の子たち』のD・G・グリーン処女長編ですが、これまた特筆されるべき出来映え。描写は繊細で瑞々しく、スタイルは斬新で、確固とした具体性を持つ風景と世界が既に確立している。

年に一度、独立記念日のパレード以外に華やかなイベントのないノースカロライナ州の田舎町で、黒人を中心とした労働者階級の子供たちと、それを取り巻く挫折した大人たちの物語。

郊外の寂れた街を舞台に荒れた風景と生活と人の心を描いている訳ですが、先の見えない人生とか、子供たちが晒される野蛮で道徳を欠いた環境とか、そうした紋切り型の奥底に沈んでいる実にセンシティブな感情の揺れ動きを丹念にとららえることにこそ、この作品の主眼は置かれています。

ストーリーとしては、子供たちにとって重要ないくつかの事件、しかし社会にとっては決して重要でもないそれら(荒れた街には付きものの、お馴染みの小さな悲劇)を中心に、そこから彼らの心の中に波紋のように広がっていく動揺を導き手としつつ、吹き溜まりのような街とそこでおそらく一生を終えるであろう大人たちの間で、それでも夢を抱こうとする心、現実を見据えようとする心、逃げ出そうとする心、諦めて全てを受け入れようとする心、そうした様々な心の揺れ動きを実に繊細かつリリカルにとららえている。これは泣く!

とりわけ、中心となる数人の子供たちによる、お互いに対するそれぞれのコメントがナレーションとして導入され、その小さなコミュニティ内部の揺れ動きや距離感、相互関係の変容、アクションとリアクション、そして夢や憧れや失望や幻滅を語っていくスタイルを取っていて、これが実に効果的。
ハーモニー・コリンなんかとも共通する部分がかなりありますが、グリーンの場合、あそこまでスタイルや美学に走らず、もう少しキャラクターに寄り添う作りをしてますね。

登場する少年の一人が舞台で朗読する台詞の中に「この曲がりくねった道で、僕の魂が迷ってしまわないよう見ていて、そしてそっと抱き上げて、地面に落ちてしまわないように」ってのがあって、これが主題をほぼ要約してる。とっても良い台詞。で、その少年の運命がまた…。これ泣くよなあ。

アマチュアを中心としたキャストのアンサンブルも見事だし、2000年の作品ですが、現代映画のクラシックとしての風格さえ感じられる。
と言うか、間違いなくここには一つの潮流があるんですよね。アメリカやヨーロッパ、日本と言った地域を問わず、作家の興味を引きつけ、その創作の源ともなっている現代映画の潮流というものが。これについては、きちんと語られ、論じられ、発見され、その魅力を共有されなければいけないと思う。

『ジョージ・ワシントン』予告編(ページ上部の枠内をクリックすると再生されます)
http://www.criterion.com/films/691-george-washington

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can skip to the end and leave a response. Pinging is currently not allowed.

コメントをどうぞ

XHTML: You can use these tags: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>