真夏のイタリア映画特集

i-soliti-ignoti『いつもの見知らぬ男たち』マリオ・モニチェリ

娯楽映画とはかくあるべしという見本のような映画。脚本も演出も役者の演技も撮影も音楽もテンポも全て素晴らしくて非の打ち所がない!正直、ここまで面白いとは思ってなかった。映画ファンなら大興奮間違いなし!

モニチェリは『女たちのテーブル』公開時にリアルタイムで見て、とある重要な場面での実に意外な演出ぶりから、これはすごい監督さんだと思って、でもその後もあまり本数見ることが出来なかったのですが、この『いつもの見知らぬ男たち』は、彼とチネチッタの実力が遺憾なく発揮された見事な傑作でした。

オールスターキャストで作られた『現金に手を出すな』なんかの流れにある日常派ギャング映画ですけど、これ直後にアメリカで作られた『オーシャンと十一人の仲間』の直接的ネタ元じゃないですかね?話は本当に面白くて、でもそれ以上にスマートな語り口が実に見事!

ソダーバーグ君はね…、あ、それ言っちゃ駄目か(笑)

クリストファー・ノーランはね、…あ、それも言っちゃ駄目だな。

影の演出とか移動撮影とか、結構スタイリッシュな撮られ方してるんですが、それが映画に一切の淀みを残さない。一体どれだけの人間がどれほど苦労して準備したんだろうってショットが一瞬画面に映ったと思ったら、あっという間に次の場面に移っちゃう。これが上品さだしゴージャスさなんだよなあ!

俳優も超豪華で、マルチェロ・マストロヤンニ、ヴィットリオ・ガスマン、レナート・サルヴァトーリ、クラウディア・カルディナーレとか錚々たるメンバーですが、デビューしたてのカルラ・グラヴィーナがケイト・ブランシェットにそっくりで美しかった。

出てくる全員に家族があって、物語があって、貧困があるんだけど、その見せ方がまた本当にゴージャスで見てて豊かな気持ちにさせられます。取りあえず、みんなお金ないし泥棒なんだけど、一番大切なのはやっぱ女性だし愛だよねって物語も素晴らしすぎます。すっごい面白かった!超オススメです。

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mafioso『マフィオーソ』アルベルト・ラトゥアーダ

真夏のイタリア映画特集第二弾として見ましたが、ヤバイ、これメチャクチャ面白い!60年代イタリア映画を代表する(が、娯楽商業映画と見なされたため国外ではあまり知られていないという日本映画でも多いパターンの)作品ですが、すさまじくソリッドな作りに圧倒された。

62年作品ですが、この時代のイタリア映画というと、ネオリアリズムを代表するロッセリーニやフェリーニ、アントニオーニ、ヴィスコンティ、デ・シーカから、さらにパゾリーニやスコラ、ズルリーニなど、錚々たる映画作家の名前が並んでいますが、その華やかさを下支えした映画界全体の充実ぶりを忘れちゃいけない。

冒頭は、いかにもイタリア的なのんびりとした娯楽映画の雰囲気で始まりますけど、もうここから既にその映画としての作りの端正さと堅実さが際立ってる。工場に並んだ沢山の車や窓の開け方一つに至るまで、全て厳密に計算されていて本当に見事。乱雑に見えて全く余分なものがない。日常的なディテール描写に映画的スケール感が満ちあふれてるってのは、やっぱホント良いよね。

何気なくこういうの出来る辺りもう実力の違いというか、肩慣らしのキャッチボールで150kmの剛速球放り込む感じと言えば良いでしょうか。いや、これが分かるか分からないかは映画にとってやはり大問題。今同じことをやるのは難しいにせよ、ここに映画の大いなる魅力があったことは分かっておかないと。

お話としては、ミラノの工場に勤める主人公が妻と子供を連れてはじめてシチリアに里帰りするところから始まる。カルチャーギャップとか、ほのぼの系の笑いと素晴らしい風景を堪能しているうちに、いつの間にか彼の過去とシチリアの最も深い部分にまで引きずり込まれてしまうって感じ。

アメリカ映画でお馴染みのあのシチュエーションを、シチリア側から逆に描くとこうなるか!って驚きに溢れる展開で、いやあ、こういうのはちょっと見た記憶あまりないなあ。ビックリ。アメリカ映画ファンも必見。脇役に至るまで顔の選び方が本当に的確で、カッチリ作り込まれた実力派の傑作!

昨日の『いつもの見知らぬ男たち』と並べると、モニチェリは映画作家として正当に評価しなくちゃいけない人って感じ。エクリチュールの隅々に至るまで新鮮で冒険心に溢れてる。ラトゥアーダは、どちらかというと因習的描写にとどまった部分が多いですが、それでもこのストロングスタイルの完成度の高さはすさまじい。

ただ、そのストロングスタイルの作りの中に、敢えて名前は挙げない最近の映画作家の「才気とセンスに溢れた」渾身の描写とほぼ同じものが出てきたりしちゃうんだよなあ…、しかも実にあっさりと。それ思うと…、いや何でもないっス…

『マフィオーソ』も『いつもの見知らぬ男たち』も、普通に今年のベストテンに入っちゃう作品で、いやあ、ホント面白かった!ストローブ&ユイレの『シチリア!』に大喜びした映画ファンにも必見の作品!みんな、夏はイタリア映画だぜ!

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