久保ミツロウ「アゲイン!!」

久保ミツロウ「アゲイン!!」題名通り主人公が高校生活をアゲインして生き直す話で、本来私は一番嫌いなジャンル。日本映画、タイムスリップしすぎ、現代人、幕末行き過ぎっていつも思ってる(笑)。ただ、この作品は違う。そうしたタイムスリップもの、生き直しものへの批評が含まれてる。

と言うのは、この手のジャンルって、一度生きてその過程で何かを選んで、でもその結果に満足できなかった者がタイムスリップして別の選択肢を選ぶという構造になってる場合が多くて、でもそれって、一度限りの選択の連続としての人生に対する裏切り以外の何ものでもないと思うんですよね。

単純に、生きるってそういうことじゃないだろ、と。それに対して「アゲイン!!」は敢えてその最もベタベタな展開を踏襲しつつ、その批評であり裏返しでありこうした物語に依存する私たちに対する教育的メッセージでさえありながら、同時にとても面白い少年漫画にもなってる。すごい!

主人公は元々の学園生活で、何も選択してこなかった男なんですね。だから、生き直してみたところで、別の選択肢を選んでシミュレートしてみようとは絶対にならない。ただ、選ばなかった人生はもう嫌だと考え、自ら選ぶ人生を選択する。そして、それがもたらす結果に右往左往させられる。

それこそつまり生きるってことであって、だから主人公は生き直すことではじめて生きることを学んでいる。むしろ、最初の人生こそ、自分の頭の中に情報だけ詰め込み、あれこれシミュレートしたあげく、結局何かを選んでその結果に責任を取るという人生の意味を理解していなかったと言える。

一回限りの筈の人生こそ、逆に出来の悪い生き直しの人生であるかのように見えるって、これ、まさにわたしたちそのもの、わたしたちの時代の病そのものだと言えませんか?「アゲイン!!」は、タイムスリップと生き直しという私たちの大好きな物語技巧を使って、裏側からそれを照射している。

あと、主人公が殆ど有吉弘行なんですが(笑)。たぶん、あの辺から毒舌で怖くてネガティブに見えるキャラクターでもお茶の間の人気者になれるというヒントを掴んだんだと思いますけど、こうした人物造形の斬新さと見事さと時代に応じた説得力がこの作品の魅力を高めてると思う。

「モテキ」同様、きわめて教育的であり、素晴らしい台詞が散りばめられている作品ですが、同時に久保ミツロウはビジュアルなコミック表現に抜群の冴えを見せる人でもあって、だから同じ場所何回読んでもその度に笑わせられる。こういうのサラッと読んでその構造だけ抽出するのは勿体ないと思う。

あ、それと、「アゲイン!!」のヒロインは最初バンカラな音無響子(笑)かなと思ってましたが、途中からだいぶキャラ変わってきました。つまり、誰かの憧れとかお人形さんじゃなくて、一人のキャラクターとして生きるようになった。どっちにせよ、眉毛太くて超素敵です(笑)。

「自分と他人との温度差を態度で表現せずにはいられない病」とか、すごいなこの台詞!「自分にウソつきたくないの最優先ってヤツ」みんなそうでしょ?(笑)わたしも心当たりありまくりですよ。いいとも出たときも思ったけど、久保ミツロウにはナンシー関を感じる。

You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can skip to the end and leave a response. Pinging is currently not allowed.

コメントをどうぞ

XHTML: You can use these tags: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>