TIFF2012 day7 & best5

bella-addormentata_01『眠れる美女』マルコ・ベロッキオ
絶好調ベロッキオのこれまた傑作で、間違いなく今回の映画祭ベスト作品。17年間植物状態にあった女性の延命措置停止が世間を騒がせる中、4組の家族の物語が描かれていく展開で、不在の中心をめぐる愛と倫理と嫉妬と嫌悪と絶望と救済の物語が、さらに多くの不在の中心を生みだし、さらにその周縁の喧騒をあたりへと波及させていく構造になっている。観念的になるか、静かで穏やかな雰囲気的描写に依存しがちなタイプの物語だが、『愛の勝利を』同様、ベロッキオはそれを不意のアクションと喧騒と動乱の予感に満ち溢れた作品として見せていて実にすさまじい。静かに眠らせてはおけない人々の混乱と、静かに眠っていてはくれない人々の騒動が作品のダイナモとして全体を導いているが、全くリアルとは言えず、時に荒唐無稽でさえある状況描写を説得力を持って堂々と提示してみせるベロッキオの演出手腕がそのすべてを支えている。開かれた窓を前にしばらく佇むだけの女性の後ろ姿が、これほど緊張感をたたえ、これほど感情をざわめかせるとは!これはもう、なんかすげえな!!

Post-Tenebras-Lux-1『闇の後の光』カルロス・レイガダス
と、思ってたら、なにこのラスト2本になっての超展開!レイガダスの最新作はこちらの予想を遙かに超える素晴らしさで、うーん、前言撤回でこれが今回のベストだなあ。もう、オープニングからラストまで、一瞬たりとも目を放すことができなかった。基本的に私は映像詩って言葉を全く信じていなくて、そう呼ばれるタイプの作品には警戒してかかることにしているのですが、『闇の後の光』だけは本当に素晴らしかった。あらゆる森の影には死が張り付き、あらゆるキッチンのテーブルの下にはセックスが転がっている。畏怖と凡庸と予兆と低俗に満ちあふれたこの作品の映像と音響は、常に超越への私たちの感性を研ぎ澄まし、この世界を越えるものへの感覚を醸成する。そこにあるものは、すべて、ただそこにあるものとして、「ただ」「ある」ことへの恐れの感覚を私たちの中に生み出していく。血がざわめく音を、あなたはこの作品で聞くことができる。そしてそれは勿論、あなた自身の血の音なのだが。インターネット時代に作られた作品に、これほど強い存在への確信が漲っているとは!

東京国際映画祭2012年ベスト5
1:『闇の後の光』カルロス・レイガダス
2:『眠れる美女』マルコ・ベロッキオ
3:『目隠し』ガリン・ヌグロホ
4:『檻の中の楽園』ドゥニ・コテ
5:『スプリング・ブレイカーズ』ハーモニー・コリン

あと、別枠で
『サイド・バイ・サイド』クリス・ケニーリー

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