『サウンド・オブ・マイ・ボイス』ザル・バトマングリ

sound-of-my-voice-0022011年のサンダンスで話題になったものの日本では未公開。バトマングリと主演&脚本のブリット・マーリングは同映画祭でブレイクし、よりビッグバジェットで作った新作『The East』がアメリカで公開されたばかり。

最近のサンダンスや米インディーズの傾向を濃縮したような作品で、それはつまり、日常生活の些細な断片をリアル&カジュアルに見える手法で切り取りつつ、主人公たちのキャラクター探求をさりげなく行い、なおかつその人生の行く末を感傷的に見守る、というのが一つ。

ただし、これだと映画としてひどく小さなものになってしまいがちであるというのがここでの問題点aで、さらにはそうした生活が確かに自分と地続きのものであると見えながら、しかしその同じ世界でとんでもない出来事が現実に起きているという厳粛な事実に映画が届かないというのが問題b。

そうした中、最近の英米圏映画の予告編で「mesmerizing」と言う言葉が多用されていますが、それは逆に言うと、mesmerizingなものを人々が映画に求める欲求が強くなっていることを示してもいるわけで、そのための物語的装置として、たとえばカルト宗教などが登場する。

私たちの日常のすぐ隣に存在しながら、同時にそれが何か大きな出来事や事件や存在に結びつくかもしれない現実の穴としてそれは使われるわけで、これは90年代以降の日本映画とやや事情が似ている。

こうした物語装置を使いながら、カジュアルな日常風景を模した感傷的作品に何か映画的な亀裂を持ち込もうとすること、これが二つ目。

このあたりまでが、だいたい近年のサンダンス系に共通する特徴で、それはまさにこの作品そのものだと言っても良いでしょう。

映画はまあその範疇にとどまり、その中では結構上質にできているという意味で、優等生的な作品だとは思うし、その限界を指摘することも簡単だけど、ただし、主演のブリット・マーリングはなかなか素晴らしかったと思う。カルト宗教の教祖を演じるのが卓越した透明感のある美人というのも面白い。

マーリングは経済学の学士を取った後、ゴールドマン・サックスの誘いを断って俳優を目指すものの、キャーキャー叫ぶだけのホラー映画のブロンド役しか来ない現実に気づき、自分で脚本を2本書いたらしい。で、その2本が同じ年に共にサンダンスでプレミア上映された、と。才女ですね。

『サウンド・オブ・マイ・ボイス』予告編
http://www.youtube.com/watch?v=W20Fl5m5FdM

ほっとくと優等生的なものばかり出てきがちなのは米インディーズ界の問題点かもしれませんが、でも一方で「日本のお父さんは昔みんなワルだった」って糸井重里の言葉、あれそのまま日本映画とか日本のシネフィルとかに当てはまるからなあ(笑)。みんな、自分の限界と向き合うとこからだよ。

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