『夜来る悪魔』

portadad『夜来る悪魔』Nachts, wenn der Teufel kam(1957)
ロバート・シオドマク

戦後、西ドイツで撮っていた時代のシオドマク作品で、彼の映画は日本で見られないものが多いですけど、とりわけこの時代のはすっぽり抜けてる。

大戦末期ナチス政権下のドイツを舞台に起きた連続殺人事件もので、題材からはきわめてセンセーショナルな作品の印象がありますが、実際はありとあらゆるタイプのサスペンスを撮ってきたシオドマクが余裕の演出ぶりで見せる悠々としたタッチに見所と、実は少し仕掛けのある作品。

主人公の刑事がガールハント(自分の杖と女性の傘を間違えて女性に声をかけるとか)したり、せっかく食事に招いてもらったのに捜査の手がかり探しで部屋の壁紙引っぺがしたりとか、ユーモラスでゆったりとした物語運びが楽しい。

犯人(マリオ・アドルフが演じていて、これがすごい)はあっさり捕まるし、そのあたりにサスペンスを作り出そうとはしていない。むしろ、現場検証の最中に見せる犯人のふてぶてしい人間性とか、時折走り出す狂気とか、そうした全体をまるごと見る者に委ねるような作品になっていて、ところがそうした複数の顔を持つ雑多な現実が、最後の最後にナチスの恣意的かつ政治的な思惑によって全て抑圧され封印されてしまうところにこの作品の最大の演出意図があると言って良いでしょう。

すごくアメリカンに撮られた大らかな作品であり、まさにハリウッドで技術を培ったシオドマクらしい演出の豊かさを誇り、ラストまでその表情を全く崩さないにもかかわらず、その意図するところはとても暗くて陰惨というエンディング。シオドマクのベストではないですが、とても面白い映画でした。

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