『ちゃちなブルジョワ』

borghese-piccolo-piccolo-trailer-title『ちゃちなブルジョワ』Un borghese piccolo piccolo(1977)
マリオ・モニチェリ

久しぶりの再見ですが、これは本当にすごい。本当にすごい映画。日本ではあまりに知られていない巨匠モニチェリの代表作の一本にして、70年代映画のベストテンに入るべき大傑作!

初見時には喜劇を悲劇のように、悲劇を喜劇のように撮るモニチェリの演出手腕の見事さと、とある場面で見せる観客の予想に対する鮮やかな裏切りに心底驚かされたものですが、いやあ、今回はもう主人公の心情が分かる年になってしまったのか、とりわけ後半はずっと泣いてた。あまりに悲痛。

あまりにおかしくて、あまりに陰惨で悲しい作品。いや、これは本当に見てるのさえつらい。つらいんだけど、見ざるを得ないし見させられてしまうという。この次がまたまるで『カリフォルニア・ドールズ』のような『ハリケーン・ロージー』で、この時代のモニチェリは実に充実してる!

ジョン・ヒューストンの『賢い血』とモニチェリの『ちゃちなブルジョワ』は、70年代後半をある意味で象徴する映画として絶対見られるべきなのですが、その両者が共に日本で公開されてないってのは許しがたいですよ!

冒頭は、20世紀後半以降世界中で起きているいわゆる就活地獄とか通勤地獄なんかを題材にした人情喜劇のような始まり方で、父親が息子をお役所に就職させるためフリーメーソンに入るってあたりまではまだこのジャンルが許容する物語の範囲内なのですが、それがある事件をきっかけに、

怒濤のような展開を見せ、もはやどんなジャンルにも物語にも収まらないような異様な映画の畸形化・肥大化を見せる。しかも、またそれがまたクラシックで端正な映画であるかのようにも見えるというのがすさまじい。後半の陰惨さは衝撃的という言葉でさえ足りないほどです。

アルベルト・ソルディとシェリー・ウィンタースの老夫婦が素晴らしくて、いや素晴らしいって言葉では足りないような素晴らしさで、後半はもうなんか正直痛ましすぎて見ていられなかった。これはきついなあ。昔見て、ああ良い映画だとか思ってた頃は気楽だった。あまりにきつい映画。

70年代頃のシェリー・ウィンタースはどの映画でも素晴らしくて、日本でも忘れられないファンはたくさんいると思いますが、いや、この映画の彼女はちょっとすごすぎです。

『ちゃちなブルジョワ』予告編見つけましたが、貼らない。これは見ない方が良い。いつかどこかでちゃんと上映されるのを見た方が絶対良いです。

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