新年の挨拶のようなもの

みなさん、明けましておめでとうございます。

昨年は、ポルトガルの映画監督ジョアン・ペドロ・ロドリゲスのレトロスペクティヴを行いました。クラウドファンディング支援者の方々や映画を見に来てくださった観客の皆さんをはじめ、イベントにご協力いただいた上映劇場や大学のスタッフ、DotDashにボランティアで協力してくれたみんな、冨永監督、ドラァグ・クィーン座談会に出席してくださった皆さん、Dommuneの宇川さん、そしてとことんまで個人的に付き合ってくださった篠崎監督など、本当に沢山の方々からご協力を得ることが出来ました。

皆さんのおかげで、イベントは全体として大成功しました。
作品を見てとっても楽しんでくださった方々、日本に来て沢山の新しい友人を作り、そして生涯の夢がかなったとまで言ってくださったジョアン・ペドロ・ロドリゲス監督、そして彼のパートナーであるジョアン・ルイ・ゲーラ・ダ・マタさんなど、たくさんの貴重な出会いと体験の機会を作ることが出来たのではないかと嬉しく思っています。

また、私自身のことではありますが、一映画批評家が権利交渉から素材作り、字幕製作、宣伝、監督招聘に至る全てをほぼ個人レベルで行うことでこうした海外映画作家のレトロスペクティヴのような大きなイベントを実現したことは、現在の日本映画を取り巻く閉塞感や先行きのなさに対して、一つの未来への突破口の可能性を見せることにもつながったのではないかと思います。

もちろん、これはまだまだ小さな一歩ですが、しかし、勇気を持って一歩前へと踏み出すこと、それが今は本当に重要なのではないでしょうか。
大きなリスクと情熱、労力を費やしながら、それでもこの希望のない現状に対して、何かそこに新しい可能性を生み出そうとすること。そうしたささやかな試みと強い意志とそれを実現する確かな行動力が一つずつ寄り集まり、次の日本映画の未来を生み出す力となれば良いと心から願っています。

私自身もまた、もちろん昨年のイベントだけで終わらせるつもりはありません。
レトロスペクティヴの準備と並行して少しずつ可能性を探っていた、もう一つ別の企画の実現可能性を現在本格的に探っている最中です。

それは、新しいメディアの立ち上げです。

もちろん、簡単なことではありません。
状況的には、完全な逆風だと言って良いでしょう。
でも、そんなことは最初から分かってる。
どんなに逆風であり、どんなに世の中の状況が悪くても、それでも生みだし、継続していかなければならないものがこの世界にはあるのです。

映画や文化・芸術のメディアは、世界的にもちょうど変革期に当たっていると私は考えています。
映画に関して言えば、例えば「カイエ・デュ・シネマ」の頃から数えて、ちょうど三世代目くらいの新たなフォーマットが必要とされている時期です。
こうした変革期のまっただ中で、次の何十年かに維持可能なシステムを構想し、そしてそれを実際に実現するための情熱を持ち、足を使って人と会い、情熱と思いを共有し、少しずつ、本当に少しずつですが実現に向かって進んでいく。
現在私がやっているのは、だいたいこういう作業です。

昨今では、新しいシステムやフォーマットを思いついて提唱すれば、それで新しい時代が来ると思い込んでいる人も多いようですが、それは完全に嘘です。
むしろ、可能性を実現するための情熱と思いの強さと、人に伝え広めていくために実際に足を使って人と会う行動力、粘り強さ、こうした地道な積み重ねの中からしか何も生まれないのです。

便利すぎる言い回しなので、普段はあまり使いたくありませんが、でも、結局のところ人間なんですよ。
それは本当の話です。

でも、ちょっと考えてみてくださいよ。
世界中で模索しているような新たなフォーマットを日本で、日本の現在の状況に適合する形で実現し、そしてそれを通じて日本の映画や文化、アートが自らの新たな未来を切り開いていくことにもつながるのだとしたら、それはどんなに素晴らしいことでしょう。

みんなが暗い顔をして俯いている時ってのは、本当は逆にチャンスなんですよ。
自分の努力と行動で新しい世界を切り開いていける訳なんですから。
歴史を辿ってみても、そんなハッピーな時代なんてそうそうない程です。
もちろん、夢のようなチャンスが転がっていたり、壮大な成功がいきなり実現したりってことはまずないですよ。
そんな儚い夢持ってると、挫けちゃうのは目に見えてますし。

でも、夢を見ることは大事だし、自分が勝ち得た可能性の小さな粒が、後にどれほど世界を変えていくことになるかなんて誰にも分からないじゃないですか。
そしてそれは、同時代の人間には理解されなくても、後世の人達にきっと見つけ出してもらえる筈です。
それを信じながら、また今年もあれこれ苦闘を続けようと思います。

みなさんにも、また色々無理なお願いをするかも知れません。
申し訳ありませんが、どうぞ、よろしくお願いします。

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