『NO』

no_ver2_xlg『NO』
監督:パブロ・ラライン

ピノチェト独裁政権の最後を描いたチリ映画で、タイトルからはストレートな政治映画を想像するかも知れませんが、実はきわめてクール&クレバーに作られた作品。ものすごく面白い!現在どのように政治映画は作られるべきかという一つの回答がここにある。

実は前々回の東京国際映画祭でコンペに入ってたんですよね。その後公開されてないと思うんですが、いや、これ絶対見なきゃ駄目でしょ!必見作!現在の日本で考えるべき問題の殆ど全てがここで既に答えられてる。これこそ今見られるべき/作られるべき政治映画。しかも超面白い!公開すべき!

ピノチェト独裁政権に対して国際世論による批判が高まり、その任期をさらに延長すべきか否かという国民選挙が行われたのですが、海外での思惑とは異なり、実は賛成派が勝利しようとしていた。と言うのは、その残酷で暴力的な独裁ぶりにも関わらず、経済的には成功していたから。

国民の多数は一定以上の水準にある生活を守りたいと考え、左翼の古臭く扇情的なキャンペーンや生真面目さにうんざりし、さらに若い層はどうせ選挙はあらかじめ結果が決められているか、あるいは抵抗しても無駄だとしらけきっていた。って、どこかの国でも聞く話ですよね?

で、15年間のピノチェト政権下で一度も認められなかった自由なテレビ放送が、一日15分のみ、選挙キャンペーンとして反対派にも許されるのですが、これが映画の主要な舞台になる。当初は、ピノチェトの暴力を示す映像と弾圧された者たちの証言で構成された番組を左翼陣営が用意するのですが、

やがてこれでは勝てないとして、それまでコマーシャルを手がけてきたテレビマンが招かれる。声を奪われていた者たちが声をはじめて持つことが出来た、それが重要なのだという左翼陣営に対して、彼は一つだけ質問する。あなたたちは本当に勝ちたいのですか?と。

そこから、主人公が仕掛ける明るくて希望とユーモアに満ちあふれたポップな選挙キャンペーンが始まるのですが、ピノチェト派の妨害や脅迫ばかりでなく、同じ陣営である筈の仲間たちからの批判や蔑みにも抗しつつ、彼はひたすらクールに仕事を進めていく、って感じ。

どうも相手が強いぞと感じ始めたピノチェト派が、主人公の上司を引き入れて、対抗戦術を打ち出したりするのですが、そのネガティヴキャンペーンにも関わらず、ひたすら明るくポップでハッピーなキャンペーンを続ける辺りとか、いやあ、超クールだ!面白い!素晴らしい!

しかも、主人公結構情けないしね。家族の命が危険にさらされて、そのピノチェト派の上司に頼って助けてもらったりもする。名誉を重んじて家族を見殺しにとかしない。でも、自分の仕事は淡々とやり遂げる。

カンヌ映画祭の監督週間でアートシネマ賞を取ったり、アカデミー外国語映画賞のチリ代表になったりもしてますが、さらに色んな海外の雑誌で2013年洋画ベストワンに選ばれてます。実際、ホントに面白い。日本でも公開すべき!主人公はガエル・ガルシア・ベルナルだしね。

『NO』予告編 http://www.youtube.com/watch?v=ApJUk_6hN-s

ピノチェト派が最初に用意していたキャンペーンで、繁栄、威厳、勝利する国みたいなのを打ち出してたのは笑った。反ピノチェト派の生真面目なキャンペーン映像も。どこも同じだよね。でも、それじゃ駄目だってところから始まるのが映画だし、文化じゃないかと。

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