『プライマー』

primer『プライマー』Primer(2004)
監督:シェーン・カルース

カルースのこの処女作は、なんと日本でも劇場公開されDVDにもなってる。超難解なのに!レンタルしてきました。『アップストリーム・カラー』がピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』だとしたら、これは『エントロピー』だと言うべき。

ストーリーは超難解で技術的に粗い部分はまだ残ってますが、それでも物語内容をストーリーテリングそのものに反射反省させつつ、新たな映画形式を生み出そうとする野心を強く感じる。実際、サンダンスその他で数多くの賞を受賞し、映画作家カルースを一躍有名にした作品。

彼はそれまでソフトウェア・エンジニアとして働いていたようですが、映画を作るために仕事を辞め、一年かけてシナリオ執筆し、さらに二年かけてこの作品を仕上げたらしい。製作・監督・脚本・音楽・編集・撮影・出演を全て一人でこなし、わずか70万円のバジェットでこの映画を完成させた。

そして、この映画の成功によって様々な方面から声をかけられたにも関わらず、カルースはその後『アップストリーム・カラー』を同様のシステムで仕上げるまでなんと九年間かけているのですよ。そしてその第二作では、物語とストーリーテリングばかりではなく、映像や音響によるスタイル、

そしてハリウッドから限りなく遠く離れた自らの映画製作環境まで全てを一つの作品世界として構築するというとてつもなく壮大な野心を実現している。いや、これはマジで注目すべき作家ですよ!

『プライマー』は物語的にはタイムトラベルもので、偶然タイムマシンを開発してしまった二人の科学者の間の友情と信頼関係と人間性の危機を超多重化されたタイムライン(たぶん5本以上?後で書いてみる)の中でストーリーテリングそのものの危機ないし亀裂として描いていくというスタイル。

『プライマー』もすごく面白いです。見終わった瞬間にもう一度見直したくなる。私の場合、そんな映画は実はそれほど多くないんだけど。でも、『アップストリーム・カラー』はもっとすごいからね!

『プライマー』Primer(2004) 予告編 http://www.youtube.com/watch?v=4CC60HJvZRE

『プライマー』も既に十分才気を感じさせる素晴らしい映画なんだけど、ここで終わってたらカルースは複雑な技巧を駆使する映画作家ってレベルにとどまったかも知れない。その仕掛けを巡ってペダンティックな議論は巻き起こすだろうけど、って感じの。

『アップストリーム・カラー』で何が変わったかというと、まあ全てバージョンアップしてるんだけど、まず何と言っても映画として気持ちいい!まさに、映像と音響が咲き誇ってる感じがする。だから見てる間も見終わってからも、こちらまで気持ちがソワソワして落ち着かない!

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