雑記090702

godard_5早稲田の授業ですが、映画のクラスであるわけで、受講者はそれなりに映画に関心を持っている人が大多数であるに違いないわけですけど、前回、そこでゴダールの話をした際、ちょっと気が向いて、この中でゴダールの映画を一本も見たことがない人、と聞いてみたところ、およそ4割近くの生徒が手を挙げました。
テレビでもDVDでも、あるいは断片的に見た経験でも構わないと告げた上での、この数字です。

もうちょっと見てるかな、とは期待していたのですけど、でもまあ、そんなものでしょうね。
そんなもん。
ゴダール見てない人が多いからダメだとか、そういう風には思いません。
そんなもんなんですよ。

シネフィルの子もたくさん受講してくれているクラスではありますけど、全体で割合を取ってみると、映画の、それもヌーヴェル・ヴァーグについて語っている授業に於いてさえ、ゴダール見たことある生徒は6割超える程度。
むしろ、相当優秀な方。
それが世の中なんだと思います。
私たちが生きている世の中。
そんな中で、わたしたちは映画について、映画作家について、好きな映画について語って行かなくてはいけないわけですよ。

そんな中で、じゃあ、たとえばゴダールのような、こちらとしては見てて当然、知ってて当然、と言うより、人生の大テーマとして自分の中に抱え込んでいて当然であると考えてような映画作家について、それを相手に見てもらう、好きになってもらうにはどうすればいいのか。
恋空ではなく、いや、それも見てて良いんだけど、でも、『右側に気をつけろ』の空を見ることがどれほど面白くて刺激的で感動的なことかということを学生たちに伝えるにはどうすればいいのか。

いや、見てもらわなきゃダメなんです。
映画の授業を受講しつつ、ゴダールを見ていない4割の学生さんたちにも、それを見てもらわないとダメ。
本当にダメかどうかはともかく、少なくとも映画批評家としては、そうした態度で世の中に対するべきだと私は思うんです。

好きな映画の語り方、伝え方、これですね。
これこそが大事なんだとわたしは思います。
で、これ、結構難しかったりするんですよ。

たとえば、映画好きのコミュニティが成立しているのが当然であるような状況で、そこで自分の趣味や映画の善し悪しを通すための方法というのは、いろいろあった訳じゃないですか。

たとえば、映画史とか映画理論を大上段に振りかざすとか、あるいは、もっとカジュアルになってくると、自分だけじゃなくて誰が良いと言っていたとか、あるいは符牒とか暗号のような言葉を使って、それが通じ合う者同士の暗黙のコミュニティを形成していくとか、あるいは、大文字の権威を否定する身振りを前提にしつつ、別種の権威をどっかから密かに引っ張ってくるとか。

いずれにしても、誰もが映画史の金看板を背負わなくなってしまった現在、権威とアンチ権威という構造は成立しにくい。
そこにあるのは、勢い、矮小な派閥とコミュニティによる自我の張り合いという陰湿な構図になりがちだったりするんですね。

で、これが良くない。

かつてのように、映画史がぁ~、とか、映画理論的に言ってぇ~、とかやってると、それを聞く側としても、賛同したり反発したりするなど、自分のポジションがその中に見つかりやすいし、その身振りを通じて映画の世界に結果として半ば荷担することにもつながりやすい。

ところが、派閥的な内向きの論理で語りを構成しちゃっていると、聞く側としては、単に自分には関係のない遠い世界の話だとしか思えなくなってしまうんです。
その言葉は、ゴダールを見ていない4割の学生には絶対に届かない。
当然ですよ。

じゃあ、どうするか?
この先を考えるのが、映画批評家が現在やるべき仕事であるはずなのですが、それを考えている人があまりに少ない。
と言うか、私の他に誰もいない。
じゃあ、どうするか?

まあ、淡々と、でも楽しく歩んでいくしかないですけどね。
他人は他人。
自分は自分。
目配せくらい、たまにはあると良いですけどね。

あ、あと、バーゲン行ってきました。
ステファン・シュナイダー何点かと、青山の路面店でドリス・ヴァン・ノッテンを幾つかと、あとはウテ・プロイアなどをちょこちょこ。
疲れました。

今週末のシネクラブのお知らせは、たぶん今日の夜にでもまた。
http://www.ifjtokyo.or.jp/agenda/evenement.php?evt_id=1506

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