『賢い血』

wise_bloodずっと念願だったジョン・ヒューストンの『賢い血』を、ついに見てしまいました。
フラナリー・オコナーの原作も、ちくま文庫版で買ってはいましたけど、映画見てからと思って敢えて読まなかったもんなあ。

もうね。
むっちゃくちゃ面白い!
衝撃的なまでに面白い。
ほとんど、他の映画見るのがしばらくイヤになってしまうほど面白いです。

アメリカの新聞に掲載される風刺漫画のような、もしくは異常にハイテンションな爬虫類のようなブラッド・ドゥリフが主役を演じている段階で、この映画の成功は半分以上約束されていたようにも思いますけど、いや、ヒューストン、めちゃくちゃ力入れて演出してるよなあ。
めちゃくちゃ前衛です。
本物の前衛。

簡単に言えば、現代アメリカの風景とその背後に拡がる濃密な物語世界との閾を見つめようとした作品であり、血と商売をめぐるグロテスクなコメディであり、自分自身の内部に埋め込まれた他者をめぐる抵抗と探求と孤独と贖罪の映画であろうと思いますけど、そうした原作のテーマを、歩くこと、座ること、ベッドに寝ること、草の上に寝転がること、車で移動すること、服を着て他人の前に出ることといった登場人物たちの具体的な行動の内部において提示することにのみ、演出は徹底していると言えるでしょう。
車一つとってもね、ホントにすごいんだ、この映画。
やるかなあ、ここまでって感じ。

2本立て組むとしたら、ロベール・ブレッソンの『たぶん悪魔が』かなあ。
この組み合わせ、かなりパワフルだと思う。

ティム・バートンもポール・トーマス・アンダーソンも、たぶんこの作品なんかが到達した高みを目指して戦っているのだと思うし、彼らは彼らなりにとてもよく頑張っているとは思いますけど、いやでも、正直これ見ちゃうと、まだまだだなあって思いますよね。
後退している印象もあるし。

すごいです。
今の日本映画に欠けているものの全部がここにはある!
ジャームッシュの新作見たときも思いましたけど、やっぱアメリカ映画って、震えるの作るもんなあ。
心が震えましたよ。

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9 Comments »

 
  • aakurara より:

    はじめまして。画像検索でこのサイトが引っかかって、わぁ日本でWISE BLOODを観ている人がいるんだと思ったら、映画専門の方だったんですね。私は小説のほうを先に読んで衝撃をうけたのですが、しばらくして今度は「カッコーの巣の上で」を読んで映画を観て、Brad Dourifに興味をもち、調べていたらWISE BLOODが映画化されていて彼が主演しているというのを知って、早速DVDを買い求めました。何度か鑑賞してから、いまは小説を読み直しながらまた観ています。Dourifのヘイゼルは超ハマリ役だと思います。

  • admin より:

    コメントありがとうございます。
    ブラッド・ドゥリフって、屈折した影のある(どこかで狂気に走りそうな)若者って印象ですけど、気がつけばもうすぐ60歳なんですね。
    びっくり。
    個人的には、トビー・フーパーの『スポンティニアス・コンバッション』やウィリアム・ピーター・ブラッティの『エクソシスト3』なんかが記憶に残ってます。

  • aakurara より:

    彼の「チャイルドプレイ」あたりから以降の経歴は、アカデミー助演男優賞候補になった俳優の経歴に見えないんですけどね(笑
    私はYouTubeで、ISTANBULとGRIM PRAIRIE TALESというのを観たのですが、どちらも面白かったです。ドゥリフは独特の魅力のある俳優だと思います。なんとなくですが、サイレント映画にも向いていそうな気がします。

  • admin より:

    ちょうど添付画像の場面が、イラストになってクライテリオン版DVDのパッケージを飾ってますけど、センス良いなあ~と思いました。
    静謐で硬質なフォルムの中に、破壊的かつ破滅的な衝動が渦巻いているような感じで、こういう顔はとっても映画的だと。
    パッケージ持ってるだけで嬉しくなるようなDVDは、残念ながら日本ではほとんど見かけません。

  • aakurara より:

    さすがプロ、詩的な言い回しをされますね。
    顔(とくに眼)もいいんですが、彼は身体全体で表情をつくるのも上手いなあと思います。なので、メソッドアクティングに関心をよせていたというようなことをどこかで読んだ気がしますけど、内面からキャラクターを表出するというよりも、むしろ顔や身体の表情で性格とか感情を表現するタイプの俳優なのかなーと思うのですが。
    私もこのDVDのカバー好きです。本の表紙なんかも欧米のはかっこいいんですよね。

  • admin より:

    役者さんは、外面に表出されてスクリーンに現れるものが全てであるわけですが、とりわけホラーなんかに好んで出演する彼のような人は、そこに奥行きを感じさせるようなタイプの演技をする、ということですね。
    ホラーの場合、あくまで表面にとどまる軽さのような演技は不似合いですから。
    黙って立ってても、それが安定した静止状態であると感じさせる役者さんと、その骨格のどこかに巨大な力が不均衡にため込まれ、次の瞬間にも全てのバランスを崩しつつ、こちらに向かって傍若無人に放出されるかのように感じさせる役者さんがいるのだと思います。
    メソッド演技で有名なマーロン・ブランドなんかにしても、わたしなんかが関心あるのは、その演技の方法論ではなく、スクリーン上でいかに自らのイメージやエネルギーを観客に対して操作しているか、という部分だったりしますね。

  • aakurara より:

    あ だんだん難しくなってきました。でもそのタイプ分けは面白いですね。私はそんなに映画をたくさん観ていないので、比較できるサンプルが少ないのですが、マーロン・ブランドなんかは、こちらが観ていて、次にどういうエネルギーを向けてくるか予測できなくて不安になることがないというか、少なくとも私はそういう不安定さを感じたことがないです。あくまで役に与えられた人格の範囲内ですべてコントロールしているのが分かる、と言いますか(あ、でも「ラストタンゴインパリ」ではどうだったかな)。最近観た中で、その種の不安定さを感じたのは、ブラッド・ドゥリフのほかには、「グランド・ホテル」のグレタ・ガルボ、あと不安定さが笑いに転化するという点で不安の質が違いますが、バスター・キートンですかね。
    すみません、全く直感だけで言っているので全然的外れかもしれません。それに、私が言ってるのは「役者」のタイプでなくて「役」のタイプの問題のような気もしてきました。それに何度もコメントにお返事くださってありがとうございます。

  • admin より:

    じゃ、ちょっと安易な比喩に話を戻すと(笑)、ブラッド・ドゥリフは、ジェームズ・キャグニーの霊に憑依されてビックリしている大学生、って顔してると思います。

  • aakurara より:

    あ〜本当だ! すごく似ていますね。顔つきもですが、いい意味でバランスが安定していない感じのところも。もしかすると、ヴォードヴィルとか舞台出身の役者さんには割にいるタイプなんでしょうか。

 

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