ベティカー×2

comanche_stationride_lonesomeバッド・ベティカー監督&ランドルフ・スコット主演によるB級西部劇、さらに2本。
『ライド・ロンサム』と『決闘コマンチ砦』です。
原題はそれぞれ、”Ride Lonesome”と”Comanche Station”で、1959年と60年の作品。
ともにシネマスコープ。

これまでのベティカー&スコット作品の各要素やそのフォーミュラを踏襲しつつ、さらにこの2本だけ取り上げてみても、驚くほどそっくりなものとして作られています。
殆ど、同じコインの裏表であると言っても良いくらい。

たとえば、2という要素の組み合わせと組み替えによるドラマツルギー、花嫁強奪、人質をめぐる奪い合い…。さらには、この2本の作品に特有の要素として、兄弟という新たな2の導入、花嫁を奪われた存在である主人公が別の人物の妻と道中を共にすること、そして、「アメリカの夜」による夜間シーンの多用、その情緒的活用、インディアンの登場、岩場の多い風景の魅力を活かしたシネマスコープによる美しい映像、男×2+男×2+女×1による五人連れの道中…。

おそらく、しばらく時間をおいてから思い出してみるとき、この2作の印象は互いに入り交じったものとなっていて、殆ど区別が付かなくなっているように思います。
それくらい、この『ライド・ロンサム』と『決闘コマンチ砦』という2本の作品はよく似ている。
微妙な結末の違いこそあるものの、むしろその差異によって、これら2本の作品がいかに同じ構造を持ったものであったかが際だてられていたようにも見えます。
それはあたかも、自作の内部に秘められ、それらを前進させる根源的な動力となっていた2という要素を、これらの作品によってベティカーは映画の外部にまで押し広げ、双子の作品として見られるよう作り上げたかのようでさえあるのです。

これら2作がコインの裏表であったとするなら、その裏側に当たるのは、先に撮られた『ライド・ロンサム』の方でしょう。
妻を奪われた「ペアの片割れ」である主人公は、その喪失感を何ものによっても埋められることなく、むしろ、周囲に拡がる大いなる西部の景観そのものが、彼の喪失感と憎悪によって変質し、歪められ、血塗られ、真っ黒に塗りつぶされているかのようでさえあるのです。

これはまさに、後にマーティン・スコセッシやロバート・アルドリッチ、ロバート・アルトマンらによって撮られることとなった作品=世界観の先取りであると言って良いでしょう。
すなわち、主人公の強烈な感情によって歪められた世界のイメージが、スクリーンの平面を重く撓ませているかのような作品を、わたしたちは『ライド・ロンサム』に見ることができるのです。
これは、すでに西部劇であって西部劇ではない。
そんな場所にまで、バッド・ベティカーはこの作品で至ってしまっていたのです。

一方、『決闘コマンチ砦』の方は、よりメジャーなトーンを保った作品として作られています。
より多くの死人が出るこちらの作品の方が、むしろ明るい調子を保っているあたり、なかなか一筋縄でいかない映画作りをやってるなあという印象もありますね。
また、こうした作品を見ることで、ベティカーによる活劇作りの見事さにあらためて気づくこともできるでしょう。

たとえば、作品の要となる対決の場面は、常に一瞬。
スコットと相手が向き合って同時にライフルを撃つ。
そして、撃たれた相手は、すぐさま地面に崩れ落ちる。
これら一連の場面を、カメラはロングでおさめるだけ。
思い入れたっぷりに死にゆく者の顔をアップでとらえたり、対決を引き延ばして緊張感を薄めたりすることは絶対にありません。
これこそが、活劇の遠近法における消失点としての、ヒーローと悪漢の対決というものです。
このあまりにもあっけない一瞬の出来事こそが、活劇の魂そのものであったわけですよ。

『ライド・ロンサム』では、脇役としてジェームズ・コバーンやリー・ヴァン・クリーフが出演しています。
ジェームズ・コバーンは、この作品が映画デビュー作になるらしい。
一方、『決闘コマンチ砦』には、クロード・エイキンス、スキップ・ホメイヤー、リチャード・ラストなんかが出演。ランドルフ・スコットの脇を固めています。
ヒロインの方は、相変わらずもう一つ印象薄いのですが、まあ、このあたりはB級映画の宿命なのかも知れません。

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