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『オーバーシンプリフィケーション・オブ・ハー・ビューティ』

An-Oversimplification-of-Her-Beauty『オーバーシンプリフィケーション・オブ・ハー・ビューティ』テレンス・ナンス:こーれはすごい!何て言ったら良いんだろう?ポスト・ゴダールのダブステップ/ヒップホップ・シネマ?ポエティックなディコンストラクティヴ・ブラックムービー?好き嫌いはともかく絶対見るべき作品だよ。

超複雑な構成と語りとビジュアルスタイルとテクニックを総動員して語られる、美しい女性と行き違った僕の感情と思考の全てをポエティックで音楽的に表現した作品って感じで、超難解で超抽象的な台詞がハードカバー一冊分ほど語られるけど、同時にアルバム一枚聞いた位の軽やかさもある。

タイトルは、「彼女の美に対する過度の単純化」って意味だけど、これは原題そのままの方が格好いいからそうした。

先に予告編貼ろう。見て、今すぐ!『オーバーシンプリフィケーション・オブ・ハー・ビューティ』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=COpJwAeuWHo

ガールフレンドとのちょっとした行き違いを描いた自らの短編映画に対する過度の注釈と反省と回顧と過ぎゆく時間と、それにまつわるQ&Aセッションなどのドキュメンタリーフィルムと様々なスタイルのアニメーションを後藤明生みたく一つの鍋にぶち込んで奇形的に膨張させたような作品。

とりわけインディペンデントで映画撮ってる人には必見のアイディアの宝庫だと思うし、新しいスタイルが映画にはまだ可能なんだってことにショック受けて欲しい。ゴダール好きだけど、あのクラシック趣味は合わないって人にも。面白い作品だと言うばかりでなく、色んな映画の可能性を感じる。

(いやあ、正直言うと、こういう映画を自分でも撮りたいとずっと思ってた(笑))

ラウル・ルイスの『失われた絵画の仮説』(必見!)とかリチャード・リンクレイターの『ウェイキング・ライフ』に近いかな?あの辺りをもっとゴダール風にカットアップ&ディコンストラクトして、ヒップホップでエレクトロニックにアレンジ加えた感じ。いやあ、これは刺激的な映画!

面白い映画、良くできた映画、立派な映画も良いだろうけど、映画の未来のためには刺激的な映画がもっともっとあるべき!刺激的な映画を撮るべきだし見るべきなんだ!僕たちはもうずっと長い間映画のご立派で娯楽に満ちた退屈さにあまりにも慣れちゃってたよ。こんなんじゃいけない!

これ普通だと日本公開される見込みないよね。映画祭?イメフォ?あるいは誰かがDIYでやるか?字幕付けるの超大変そうだからなあ。私も今他の企画で手一杯だけどやりたいな。これと『アップストリーム・カラー』はやりたい!

『カラー・ホイール』

color-wheel-poster-final-lo-res『カラー・ホイール』アレックス・ロス・ペリー:ここ数年注目を浴びる新人監督の一人で、最新作『リッスン・アップ、フィリップ』もサンダンスで大評判だったペリーの前作。『ヤング≒アダルト』に似た部分もある負け組コメディだけど、あれよりさらに辛辣で苛烈で同時に温かい。

ペリーはこれまで全て16ミリのストックフィルムで撮影しており、主人公二人による即興的な掛け合い演技を中心にしたこの作品がデジタルじゃないってのはなかなか驚き。ビジュアル的にはビンセント・ギャロとかニューシネマっぽい無造作でザックリした撮影とつなぎが特徴。

映画としては、そうね、オフビートでマンブルコアなスクリューボール・コメディって言えば良いかな。かなりオリジナルなスタイルだと思う。すっごい早口で膨大な台詞が口にされるので、正直半分くらいしか聞き取れませんが、でも同時にすっごくローテンションで今っぽいという(笑)。

アンカーウーマンを夢見るビッチな姉とギークっぽい陰鬱な弟の小旅行を描いた作品で、脚本も主人公二人を演じるペリーとカレン・アルトマン自身によって書かれている。物語的にはペリー自身がフィリップ・ロスとピンチョンに最も影響を受けたと語っていて、これは確かにロスっぽい気も。

因みに処女作『インポレックス』は明らかに『重力の虹』。素材の遠近のバランスがなかなか面白くて、楽しみな才能だと思う。辛辣であけすけだけど夢を抱えたナイーブな子供でもある主人公たちが堅実に生きるかつての同級生たちに笑いものにされるパーティ場面とか実に痛いし。

『リッスン・アップ、フィリップ』を早く見たい!こちらはジェイソン・シュワルツマン、エリザベス・モス、クリステン・リッター、ジョナサン・プライスと、豪華(インディー系)キャスト総出演。

『カラー・ホイール』予告編(フランス語字幕付き)。なかなか良い感じでしょ?
https://www.youtube.com/watch?v=AG3K3vdy_Tk

『スペクタキュラー・ナウ』

spectacularnow2『スペクタキュラー・ナウ』ジェームズ・ポンソルト:良い!パーティ好きのチャラくてリア充だけどブサイクめな高校生のフツーの青春ものかなって感じで始まって、やれやれと思いつつ見てたら、その繊細な内面と葛藤を正面から描いた普遍的な青春映画になっていて、これは本当に良い!

ありきたりな主人公とそのガールフレンドを巡るフツーの物語を描きつつ、そしてその王道的な記号をしっかり踏まえているにも関わらず、決して凡庸な紋切り型には収まらないスペクタキュラーな作品になっていて、それはやっぱり悩める若き主人公に等身大に寄り添った繊細な描写に負うところが大きい。

大人にとって陳腐で今更な当たり前の話でも、当事者である高校生にとっては人生を左右する大きな決断になる訳で、その苦悩と混乱に主人公と共に正面から向き合おうという気持ちにさせてくれるってのは、それが良い映画であるって証拠ですよ。

ガールフレンドとの初めてのキスシーンでの長回しとか、あとラストの曖昧なニュアンスとか、全然知らない監督でしたが素晴らしい演出だと思う。役者もみんな良い。主人公二人はさほど有名じゃないですが、それだけにフツーの高校生感がすごくて、あと周りに良い役者を揃えてる。

『ショート・ターム12』で素晴らしかったブリー・ラーソンとかメアリー・エリザベス・ウィンステッド、あと母親役のジェニファー・ジェイソン・リーが本当に素晴らしかった。登場場面は多くないですが、キッチリ見せ場があって映画全体がそれで引き締まる。

脚本が『(500)日のサマー』のコンビで、それで見てみたんですが、あっちほど美男美女は出てきませんし派手なギミックもないですが、うーん、『スペクタキュラー・ナウ』の方が良いんじゃないかな。今どきでカジュアルでありきたりなのに特別なことばかりって、それってまさに青春だよなあ。

正直、こういう映画に弱いです(笑)。泣いた泣いた。大好き!

『スペクタキュラー・ナウ』予告編 https://www.youtube.com/watch?v=XDTBLSkUmYk

『ショート・ターム12』

ShortTerm『ショート・ターム12』デスティン・クレットン:去年のSXSWで最優秀作品賞と観客賞を受賞した作品で、とっても良くできてる。こういう映画はちゃんと普通に公開されてヒットして多くの人に語られなきゃいけない。社会的弱者や問題に寄り添う眼差しの繊細さとか文化的な成熟度とか。

家庭内暴力などから少年少女を保護するシェルターの物語で、そこで働く職員もまたその施設の出身であるって所から様々なドラマが生まれる。傷ついた心の物語だけど、例えば施設から一歩でも出たら職員は子供に触れることができない厳格なルールがあって、その対比が映画的に面白い。

アメリカ的な集団性や厳格なルール、プロフェッショナリズム(ホークス!)と個人の傷ついた心の内側が対比的に(と言うことはつまり、過度にウェットにならず過度に堅苦しくならない)表現されていく訳で、こういう脚本作りとか演出とか殆ど教科書的に参考になると思うな。と言うか、学んで欲しい。

『17歳のカルテ』に似た部分もある、家庭環境と大人による性的暴行に傷ついた子供たちの映画だけど、マンゴールドのようなシネマティックな瞬間はあまりなくて、そのかわり上記のルールとか職員と子供たちの時間的奥行き(彼らもまた傷ついた子供)を伴った物語構成と感情の流れが卓越している。

テーマの重要性を含む文化的成熟度や脚本作り、物語との距離の取り方、演技の質など現在のアメリカインディー映画の質の高さをよく表した一本だと言うべき。何度も言うけど、これは本当に普通に公開されて、普通に色んな人から褒められるべき映画。たぶん数年後にはそうなると思うけど…

『ショート・ターム12』(デスティン・クレットン)予告編 https://www.youtube.com/watch?v=H8QxAYxNRgs

『ショート・ターム12』ポスター画像。ほら、超見たくなるでしょ?その直感は当たりだよ!
https://twitter.com/one_quus_one/status/446571712662892544/photo/1

今の画像は、精神的に壊れちゃった自閉症の少年がアメリカ国旗をスーパーマンのマントのようにまとって叫びながら飛び出していくけどシェルターの敷地外にまでは走り出ないって場面で、この画像だけでも自国の現在が抱える問題と正面からチャンと向き合ったアメリカ映画だって分かるよね。

『コヨーテ』

coyote『コヨーテ』ジョエル・ポトリカス:すげえヤバイ!現在の米インディー映画界での異物感がすさまじくて、でも明らかな才能でワクワクさせられる。レオス・カラックス+初期アベル・フェラーラ+ジョン・ランディス+ハル・ハートリー(笑)に麻薬とノイズミュージックたっぷりまぶした感じ。

一日中ブラブラして麻薬ばっかやってた兄ちゃんが カミュとかわなかのぶひろ読んで8mmカメラ入手して作ったフィルムって言っても良いかも。まあ、実際にそういう人が撮ってもこんな映画は作れないんだけどね。2010年の作品だけど、ホントにSuper8フィルムで撮られてる。

『コヨーテ』と『エイプ』『バザード』の3作をポトリカスは主演ジョシュア・バージと一緒に作ってる。アメリカ版カラックス&ドニ・ラヴァン。『エイプ』はロカルノでBest New Directorに選ばれ『バザード』も今年のSXSWですごく話題になってた。いや、そりゃ話題になるよ。

端正さとおだやかさと質の高さが平均的に共有されている米インディー界でこういう人が出てくるってのはものすごく面白いし、またそれを見つけ出してくるってあたり、アメリカの映画ジャーナリズムと批評がちゃんと機能している証拠。率直に羨ましい。これは日本でも絶対うけるぜ。

部屋の中にいながら突然異物をつまみ上げてきたり、暴力的に窓を開けて空気を入れ換えたりするのも批評家の仕事だったりするわけよ!

『コヨーテ』(ジョエル・ポトリカス)予告編 https://www.youtube.com/watch?v=XivCpSDqEEo

ジョエル・ポトリカスのインタビュー映像とか見てましたけど、田舎で育って子供の頃は70-80年代のホラー映画見ることだけが楽しみで、後にジム・ジャームッシュとかヌーヴェル・ヴァーグ初期の作品に狂って映画撮ったって。決まりだね。ポトリカス、日本に呼ぼう!
https://www.youtube.com/watch?v=k3hPrtpng1g

最新作『バザード』はオシロスコープが買ったみたいだからアメリカでは公開されるだろうし、DVD出してくれたら日本でも見られないことないけど、私は今すぐ見たいんだ!

Rick Chyme – New Holland Goggles(監督:ジョエル・ポトリカス)
https://www.youtube.com/watch?v=xtItFEBU7bA

でも、さっきのインタビュー映像見て、ポトリカスの映画的バックグラウンドの見立てがドンピシャだったことに我ながら驚いてる。と言うか、自慢したい(笑)。